とても好きで10回以上観た映画がある。
『君の名前で僕を呼んで』だ。
ストーリーは若い男性二人がメインの内容になっているのだけれど、私が映画の中で一番気になったのは主人公の父親だった。
その父親は考古学の教授で、いつも明るく陽気で仕事にも家族にも恵まれている。
妻のことも息子のことも、とても愛している。
好きな仕事もしているし、何も悩みがないように見えていたが、彼がラストの方で語ったセリフが自分の中で今でも忘れられない。
と言うか、Googlekeepに書いて、いつでも見ることができるようにしている。
映画のネタバレを気にする方は、この先は見ない方が良いかもしれません。
でも、もし映画を観ることがあったら主人公の父親にも注目してみてほしいです。
以下、少しネタバレあり
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失恋をした息子に父親が話した言葉はこうだった。
思ってもいない時に自然は狡猾な方法で人の弱さを見つける
今は何も感じたくないだろう
二度と感じたくないかもしれない
人は早く立ち直ろうと自分の心を削り取り30歳までにすり減ってしまう
新たな相手に与える物が無くなる
心も体も一度しか手にできない
知らぬうちに心は衰える
肉体については誰も見てくれず近づきもしなくなる
今はまだひたすら悲しく苦しいだろう
痛みを葬るな
このシーンで、どういう訳か私は泣いてしまったのだ。
良い映画なので、他にも感動的なシーンはあった。
一緒に観た人は他のシーンで何度も泣いていたのに、私が泣いたのはこのシーンだけだった。
『30歳までにすり減ってしまって、新たな相手に与える物が無くなる』
私はこの経験をしたことがある。
『痛みを葬るな』についても、そう、痛いのが嫌でたくさん葬ってきた。
痛みを葬ることは本当に気力体力を消耗する。人生をすり減らす。
当時の私に葬るなと伝えたい。
そして、心も体も衰えるについては、40才を過ぎてから日々衰えを感じている。
いつだったか、ある老人が「老人になると世の中から無いものとされる。実際にいるのにいないような感じだ」と言っていた記憶がある。
近い将来間違いなく私もそう思うだろう。
考えてみると、30代くらいまでは若い主人公たちに対して共感を覚えていた気がする。
40代に入ったことで、私は年配者のセリフに共感するようになったんだ。
人生を積んできているということだ。
今までたくさんの映画を観てきたけれど、この先、過去に観た映画をもう一度見直したら、また新たな見方ができるだろうなと思った。
そして、老人になったら、今とはまた違う風に思うだろう。
人生である。